そろそろW杯予選の北朝鮮戦ですな。試合前からメディアはこれだけ騒いでいるんだから、勝っても負けても大騒ぎするんだろうね。拉致問題が盛り上がった頃から毎日のようにメディアは飽きもせず北朝鮮ネタをやり続けているけど、ぶっちゃけ俺は北朝鮮とかどうでもいい。もちろん俺だって北朝鮮は大嫌いだし、メディアが北朝鮮を批判することには何の異論もないけど、北朝鮮ネタをやるのに使う労力の1/10でいいからそれを他の国にも向けるべきなんじゃないかなって思う。そう考えるとどうしても今のメディアや世論には距離を置きたくなる。


例えば前回のW杯で日本が対戦したチュニジアだって民主主義国家の仮面を被った独裁国家だ(政治学的には権威主義かも)。独立運動の英雄で独立後は終身大統領として独裁政治を行っていたハビブ・ブルギバ前大統領を失脚させたベン・アリが新たな独裁者として20年近くも権力の座に居座り、99.4%という常識ではあり得ない得票率で再選され、大統領の四選を禁じた憲法を改正する国民投票の賛成率も99%以上。街中だけではなくて商店や家庭にも大統領の肖像が掲げられ、町に入る幹線道路では必ず自動小銃を抱えた警官が検問している。メディアは全て検閲され政府批判は許されないし、結社の自由は認められておらず政府に批判的な政党やイスラム主義政党は弾圧され党員・支持者は投獄される。警察による拷問も日常茶飯事。


でも、こんなことは日本ではほとどん知られていないし、世界にはチュニジアのような国はたくさんある。日本のメディアはイラク戦争前にはイラク大統領選挙でのフセインの異常な得票率や街中に溢れるフセインの肖像は連日のように取り上げたし、最近はまた北朝鮮ネタを熱心にやっているみたいだけど、日韓W杯前には久米宏チュニスメディナカルタゴに行っただけで、ベン・アリの異常な得票率や彼の肖像は一切取り上げなかった。親米的であるという理由だけで核を持った独裁者であるパキスタンムシャラフを自由と民主主義の擁護者であるはずのアメリカが“友人”と呼んでいるように、日本にとっても日本を敵視しているかどうかがその国を計る基準で(あと日本人に危害を加えるかどうか)、その国の政治体制がどうとかってのは本質的な問題じゃないんだよね。


といっても、別に俺はそれを批判するつもりはない。北朝鮮が酷い国であるのは確かだし、その酷さはチュニジアの比ではないし、日本を敵視している以上それに対して日本人が反発を感じるのは当然のことだからね。ただ、北朝鮮叩きに熱心になりすぎると本質的なものを見失ってしまう気がするってだけ。